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シュバルツシルト解の導出:リッチテンソルの計算(1)


1.次はリッチテンソルの計算

シュバルツシルト解の導出(2)~(6)(まとめはこちら)で球対称な計量 \[ds^2=c^2K(r)dt^2 + L(r)dr^2+r^2d\theta^2+r^2\sin^2\theta d\phi^2 \tag{0}\] に対するクリストッフェル記号を計算した。何度もいうがほんとに長くて疲れた。

今回は、リッチテンソル\(R_{ij}\)を計算する。シュバルツシルト解の導出においては、(1)式のように、リッチテンソルはほとんどアインシュタイン方程式そのものだった。というのも、もうそのことについて書いたのがかなり前なので忘れかけていたが、シュバルツシルト解の導出(1)で \[R_{ij}=0\tag{1}\] という式が、球対称で静的かつ真空な時空ならアインシュタイン方程式と等価になることを導いた。

じゃあ\(R_{ij}\)はクリストッフェル記号からどのように計算できたかというと、まず曲率テンソル\(R^h_{~ijk}\)という量があって、\(R_{ij}=R^k_{~ikj}\)というふうになっていた。 曲率テンソルは \[R^h_{~ijk} = \frac{\partial\Gamma^h_{~ik}}{\partial x^j} - \frac{\partial\Gamma^h_{~ij}}{\partial x^k} + \Gamma^l_{~ik}\Gamma^h_{~jl} -\Gamma^l_{~ij}\Gamma^h_{~kl} \tag{2}\] と表されていたから、 \[\begin{align}R_{ij}&=R^k_{~ikj} \\ &= \frac{\partial\Gamma^k_{~ij}}{\partial x^k} - \frac{\partial\Gamma^k_{~ik}}{\partial x^j} + \Gamma^l_{~ij}\Gamma^k_{~kl} -\Gamma^l_{~ik}\Gamma^k_{~jl} \tag{3} \end{align}\] のようにリッチテンソルがかけるだろう。またまためちゃくちゃにめんどくさそうだ。本当にシュバルツシルトさんはどういう根気を持っていたのか。僕は答えが出ると知っているから我慢して計算できるが、答えが出るかどうかもわからない方程式でこれだけの計算をするのはなかなか辛そうだ。それも戦場で。



2.リッチテンソルの計算のためにちょっとした小細工

(0)式に対応するクリストッフェル記号は \[\begin{align} \Gamma^0_{~01}&=\Gamma^0_{~10}= \frac{K'(r)}{2K(r)} \\ \Gamma^1_{~00} &= -\frac{K'(r)}{2L(r)} \\ \Gamma^1_{~11} &= \frac{L'(r)}{2L(r)} \\ \Gamma^1_{~22} &= -\frac{r}{L(r)} \\ \Gamma^1_{~33} &= -\frac{r\sin^2\theta}{L(r)} \\ \Gamma^2_{~12}&= \Gamma^2_{~21} = \frac{1}{r} \\ \Gamma^2_{~33}&=-\sin\theta\cos\theta \\ \Gamma^3_{~31} &= \Gamma^3_{~13}= \frac{1}{r} \\ \Gamma^3_{~32} &= \Gamma^3_{~23}= \cot\theta \end{align}\tag{4}\] というふうだった。(3)式をみると、これの微分が入ってきている。このまま分数関数を微分してもいいが、した日にはもう手がつけられなくなることは一目瞭然だ。(一回下に示すような小細工をやらずにやってみたが、途中で諦めてしまった。なにせ項がどんどん増殖するから。)

で、\(K'/K\)や\(L'/L\)みたいな項がちょいちょい出てきていることに注目する。こういうのを簡単にできる関数といえばなんだろうか。指数関数なんかいいんじゃないか?つまり、指数関数なら微分した後も自分自身が残るからいい感じで消えそうだ、ということだ。ちょっとこじつけくさい論理だが、これが僕の限界だ。ということで、 \[K(r)=-e^{p(r)},~L(r)=e^{q(r)} \tag{5}\] としてみよう。K(r)のほうにマイナスをつけたのは、今回の計量 \[ds^2=c^2K(r)dt^2 + L(r)dr^2+r^2d\theta^2+r^2\sin^2\theta d\phi^2 \tag{0}\] と、平坦な時空、つまりミンコフスキー時空の計量 \[ds^2=-c^2dt^2 + dr^2+r^2d\theta^2+r^2\sin^2\theta d\phi^2 \tag{6}\] を比較した時の形を近づけたかったからだ。

ともかく、(5)式のように置くと、(4)のクリストッフェル記号たちは、 \[\begin{align} \Gamma^0_{~01}&=\Gamma^0_{~10}= p'(r)/2 \\ \Gamma^1_{~00} &= p'(r)e^{p(r)-q(r)}/2\\ \Gamma^1_{~11} &= q'(r)/2\\ \Gamma^1_{~22} &= -re^{-q(r)} \\ \Gamma^1_{~33} &= -re^{-q(r)}\sin^2\theta \\ \Gamma^2_{~12}&= \Gamma^2_{~21} = \frac{1}{r} \\ \Gamma^2_{~33}&=-\sin\theta\cos\theta \\ \Gamma^3_{~31} &= \Gamma^3_{~13}= \frac{1}{r} \\ \Gamma^3_{~32} &= \Gamma^3_{~23}= \cot\theta \end{align}\tag{4'}\] というふうになって、さっきよりは少しばかり微分しやすくなった。ということで、次からはこれを使ってリッチテンソルを求めていこう。