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シュバルツシルト解の導出:リッチテンソルの計算(2)


クリストッフェル記号のまとめとリッチテンソルの表式

前回 \[ds^2=c^2K(r)dt^2 + L(r)dr^2+r^2d\theta^2+r^2\sin^2\theta d\phi^2 \tag{1}\] という計量で、\(K(r)=-e^{p(r)},~L(r)=e^{q(r)}\)と置くと、クリストッフェル記号は下のようになることをみた。 \[\begin{array}{ccc} \Gamma^0_{~01}=\Gamma^0_{~10}= p'(r)/2 & \Gamma^1_{~00} = p'(r)e^{p(r)-q(r)}/2 & \Gamma^1_{~11} = q'(r)/2 \\ \Gamma^2_{~12}= \Gamma^2_{~21} = 1/r & \Gamma^1_{~22} = -re^{-q(r)} & \Gamma^1_{~33} = -re^{-q(r)}\sin^2\theta \\ \Gamma^3_{~31} = \Gamma^3_{~13}= 1/r & \Gamma^3_{~32} = \Gamma^3_{~23}= \cot\theta & \Gamma^2_{~33}=-\sin\theta\cos\theta \end{array} \tag{2}\] さらにリッチテンソルは \[\begin{align}R_{ij}&=R^k_{~ikj} \\ &= \frac{\partial\Gamma^k_{~ij}}{\partial x^k} - \frac{\partial\Gamma^k_{~ik}}{\partial x^j} + \Gamma^l_{~ij}\Gamma^k_{~kl} -\Gamma^l_{~ik}\Gamma^k_{~jl} \tag{3} \end{align}\] というふうにかけた。具体的な計算をしていく。

\(R_{0j}\)の計算

なにはともあれまずは書き下す。 \[R_{0j}=\frac{\partial\Gamma^l_{~0j}}{\partial x^l} - \frac{\partial\Gamma^l_{~0l}}{\partial x^j} + \Gamma^l_{~0j}\Gamma^k_{~kl} -\Gamma^l_{~0k}\Gamma^k_{~jl} \tag{4}\] (3)式とはちょっと添字が変わっているところがあるが、説明を簡単にするためだ。変えたのは和を取るところだから添字はなんでもいい。

(2)式をみると、\(\Gamma^k_{~0j}\)の形のクリストッフェル記号の中で0でないものは、\(\Gamma^0_{~01}, \Gamma^1_{~00}\)以外には存在しない。このことを踏まえると、(4)式の中の和になっている部分の添字\(l\)が0か1のものしか残らないことがわかる。あと、\(\Gamma^k_{~0k}\)は0なこともわかる。さらにもうひとつ、\(x^0\)に依存するものが無いことも踏まえて、(4)式は下のようになる。 \[R_{0j}=\frac{\partial\Gamma^1_{~0j}}{\partial x^1} + \Gamma^0_{~0j}\Gamma^k_{~k0} + \Gamma^1_{~0j}\Gamma^k_{~k1}-\Gamma^0_{~0k}\Gamma^k_{~j0} - \Gamma^1_{~0k}\Gamma^k_{~j1} \tag{5}\] \(\Gamma^k_{~k0}\)はさっき述べたように0だから、 \[R_{0j}=\frac{\partial\Gamma^1_{~0j}}{\partial x^1} + \Gamma^1_{~0j}\Gamma^k_{~k1}-\Gamma^0_{~0k}\Gamma^k_{~j0} - \Gamma^1_{~0k}\Gamma^k_{~j1} \tag{6}\] さらにkについての和を書き下してしまおう。(2)式と照らし合わせながら0でないものだけをかいていく。すると \[R_{0j}=\frac{\partial\Gamma^1_{~0j}}{\partial x^1} + \Gamma^1_{~0j}(\Gamma^0_{~01}+\Gamma^1_{~11}+\Gamma^2_{~21}+\Gamma^3_{~31})-\Gamma^0_{~01}\Gamma^1_{~j0} - \Gamma^1_{~00}\Gamma^0_{~j1} \tag{7}\] こうなる。(2), (7)式をよーく見ながら、\(R_{0j}\)が0にならないjを考えてみよう。...とまあわりとすぐにj=0以外では0になってしまうことがわかる。よって\(R_{00}\)以外は0で、 \[\begin{align} R_{00} &=\frac{\partial\Gamma^1_{~00}}{\partial x^1} + \Gamma^1_{~00}(\Gamma^0_{~01}+\Gamma^1_{~11}+\Gamma^2_{~21}+\Gamma^3_{~31})-2\Gamma^0_{~01}\Gamma^1_{~00} \\\\ &= \frac{\partial}{\partial r}\left(\frac{p'(r)}{2}e^{p(r)-q(r)}\right) + \frac{p'(r)}{2}e^{p(r)-q(r)}\left(\frac{p'(r)}{2}+\frac{q'(r)}{2}+\frac{1}{r}+\frac{1}{r}\right)-2\frac{p'(r)}{2}\frac{p'(r)}{2}e^{p(r)-q(r)} \\\\ &= \frac{e^{p-q}}{2}\left(p''+\frac{2p'}{2}+\frac{p'^2}{2}-\frac{p'q'}{2}\right) \tag{8} \end{align}\] と、これで完成だ。

今回はここまでにして次は\(R_{1j}\)を求めることにする。

\(R_{1j}\)の計算

なにはともあれまずは書き下す。 \[R_{1j}=\frac{\partial\Gamma^l_{~1j}}{\partial x^l} - \frac{\partial\Gamma^l_{~1l}}{\partial x^j} + \Gamma^l_{~1j}\Gamma^k_{~kl} -\Gamma^l_{~1k}\Gamma^k_{~jl} \tag{4}\] 前回と同じように、(3)式とはちょっと添字が変わっているところがあるが、説明を簡単にするためだ。変えたのは和を取るところだから添字はなんでもいい。

\(R_{0j}\)のときは色々考えながらやったら\(R_{00}\)だけが0でないことが分かったが、今回は、そう簡単には行かなさそうだ。

ということで、順に求めていく必要がある。しかしその前にリッチテンソルの対称性について書いておこう。リッチテンソルの定義式(3)をみれば、 \[R_{ij}=R_{ji}\] という対称性が成り立っていることがわかる。(と、簡単に書いたが、実はそんなに簡単にわかるものでもない。「リッチテンソル 対称性」とかで検索すればいくらでも出てくるから参照してくれい)

つまり、前回\(R_{00}\)だけが0でないことが分かったいるので、すでに\(R_{10}=R_{01}\)が0になることはわかっているのだ。ということで、\(R_{11},R_{12},R_{13}\)を計算していく。

\(R_{13}\)の計算

まずは(4)式をもとに書きくだす。 \[R_{13}=\frac{\partial\Gamma^l_{~13}}{\partial x^l} - \frac{\partial\Gamma^l_{~1l}}{\partial x^3} + \Gamma^l_{~13}\Gamma^k_{~kl} -\Gamma^l_{~1k}\Gamma^k_{~3l} \tag{5}\] で、(3)式と照らし合わせながら0になるとこを探す。

まず\(x^3=\phi\)について変化するものは無いから、二項目の偏微分は0。

第一項の\(\Gamma^l_{~13}\)だが、これは(2)式をみると\(l=3\)のときだけ0でない。しかし、このとき偏微分が\(x^3\)によるものになる。したがってこれも0だ。

つぎに第三項\(\Gamma^l_{~13}\Gamma^k_{~kl}\)。これも\(l=3\)しか残らない。でも\(\Gamma^k_{~k3}\)の形で(2)式に現れるものは無い。だからこれも0。

最後の項\(\Gamma^l_{~1k}\Gamma^k_{~3l}\)。(2)式をみて、\(\Gamma^k_{~3l}\)の形で0でないのは、\(k=1,3\)のときだけだから、 \[\Gamma^l_{~1k}\Gamma^k_{~3l} = \Gamma^l_{~11}\Gamma^1_{~3l} + \Gamma^l_{~13}\Gamma^3_{~3l}\tag{6}\] となる。(6)式の第一項\(\Gamma^l_{~11}\Gamma^1_{~3l}\)をみて、\(\Gamma^l_{~11}\)の形で0でないのは\(l=1\)のときだけである。しかし\(\Gamma^1_{~31}\)は0なので\(\Gamma^l_{~11}\Gamma^1_{~3l}=0\)になる。

次に(6)式の第二項\(\Gamma^l_{~13}\Gamma^3_{~3l}\)をみて、\(\Gamma^l_{~13}\)が0でないのは\(l=3\)のときだけ。しかし\(\Gamma^3_{~33}\)は0なのでこれも0になる。

結局全部0になってしまった。つまり \[R_{13}=0\tag{7}\] である。

\(R_{12}\)の計算

まずは書き下す。 \[R_{12}=\frac{\partial\Gamma^l_{~12}}{\partial x^l} - \frac{\partial\Gamma^l_{~1l}}{\partial x^2} + \Gamma^l_{~12}\Gamma^k_{~kl} -\Gamma^l_{~1k}\Gamma^k_{~2l} \tag{8}\] まずは偏微分から。二項目の偏微分は\(x^2=\theta\)によるものであるが、\(\Gamma^l_{~1l}\)の形の中で\(\theta\)に依存するものは無いから0になる。

一項目の\(\Gamma^l_{~12}\)は\(l=2\)のときだけ値を持つが、そのとき二項目と同様に\(x^2\)による偏微分になってになってしまう。

次は三項目\(\Gamma^l_{~12}\Gamma^k_{~kl}\)。これも\(l=2\)しかだめだ。で、kについてはどうかというと、\(l=2\)のとき\(\Gamma^k_{~kl}\)はk=3のときだけ0でない。よって、 \[\Gamma^l_{~12}\Gamma^k_{~kl}=\Gamma^2_{~12}\Gamma^3_{~32} \tag{9}\] となる。

では最後に残った\(\Gamma^l_{~1k}\Gamma^k_{~2l}\)。\(\Gamma^k_{~2l}\)について考えると、(2)式から、k=1,2,3があり得る。だから、 \[\begin{align}\Gamma^l_{~1k}\Gamma^k_{~2l} &= \Gamma^l_{~11}\Gamma^3_{~2l}+\Gamma^l_{~12}\Gamma^2_{~2l}+\Gamma^l_{~13}\Gamma^3_{~2l} \\ &=\Gamma^3_{~13}\Gamma^3_{~23} \tag{10}\end{align}\] となる。ちょっとめんどくさくなって説明をはしょってしまったが、とにかく(2)式と照らし合わせながら計算する作業だ。

ともかく(9)と(10)がのこった。つまり、 \[R_{12}=\Gamma^2_{~12}\Gamma^3_{~32} - \Gamma^3_{~13}\Gamma^3_{~23} \tag{11}\] であるということだ。ここで(2)式をみると、\(\Gamma^2_{~12}=\Gamma^3_{~13}, \Gamma^3_{~32}=\Gamma^3_{~23}\)であるから、 \[R_{12}=0\tag{12}\] となる。なんかそろそろ0でなくなるかと思ったらそんなことはなくてうまいこと0になってしまった。