物理とか

Index

球対称な波動方程式の解


1.球面波

次は球対称な空間での波を導出しよう。ベクトル解析公式集にもかいてあるが、球極座標のラプラシアンは、 \[\nabla^2=\frac{1}{r^2}\frac{\partial}{\partial r}\left(r^2\frac{\partial}{\partial r}\right) + \frac{1}{r^2\sin\theta}\frac{\partial}{\partial\theta}\left(\sin\theta\frac{\partial}{\partial\theta}\right) + \frac{1}{r^2\sin\theta}\frac{\partial^2}{\partial \phi^2}\tag{1}\] となっている。球対称な空間では、r微分以外の微分は落としていいから、 \[\nabla^2=\frac{1}{r^2}\frac{\partial}{\partial r}\left(r^2\frac{\partial}{\partial r}\right)\] となって、少しだけ変形すると、 \[\nabla^2\phi=\frac{1}{r}\frac{\partial^2}{\partial^2 r}\left(r\phi\right)\tag{2}\] とかける。

今回は、次からのことも考えて、スカラーポテンシャルの方程式、 \[\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2 \phi}{\partial t^2}-\nabla^2\phi=\frac{\rho}{\epsilon_0}\tag{3}\] を解く。(2)と(3)から、球対称で電荷のない時のスカラーポテンシャルは、 \[\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2 \phi}{\partial t^2}-\frac{1}{r}\frac{\partial^2}{\partial^2 r}\left(r\phi\right)=0\] をみたす。rをかけてやると、 \[\left(\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2 }{\partial t^2}-\frac{\partial^2}{\partial^2 r}\right)\left(r\phi\right)=0\tag{4}\] という方程式となる。

(4)から、\(r\phi\)という関数が、この場合波動方程式を満たすことがわかる。そこで、一般解として、 \[r\phi=F(t-r/c)+G(t+r/c)\tag{5}\] というのがとれるだろう。F,Gは任意の関数である。だから、\(\phi\)の解としては、 \[\phi=\frac{F(t-r/c)}{r}+\frac{G(t+r/c)}{r}\tag{6}\] を得る。

2.もう少し考える

(6)式によって、球対称な空間での波動方程式の一般解が求まった、かと思える。しかし(6)は原点で∞に発散してしまって、原点では波動方程式を満たしているとはいえないだろう。

実は、そもそもこの解(6)は波動方程式、 \[\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2 \phi}{\partial t^2}-\nabla^2\phi=0\tag{7}\] を満たすものではないのだ。もちろん、原点以外では(7)式を満たす解として成立していることは、(6)を(4)に代入してやればすぐにわかる。問題は原点だ。原点でだけ、違う方程式を満たしているのだ。

...と考えると、原点だけ右辺を書き換えてやる必要がありそうだと思える。原点だけ書き換えられる関数といえば、あのデルタ関数が思いつくのでは無いだろうか。ということで、実は、(6)の解は、(7)ではなく、 \[\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2 \phi}{\partial t^2}-\nabla^2\phi=4\pi\left[\b{F}(t)+\b{G}(t)\right]\delta(\b{r})\tag{8}\] を満たす。ベクトル解析公式に、 \[  \Div\frac{\b{r}}{r^3} = 4\pi\delta(r) \] という式があるから、これで理解できるだろう。