1.導体中の電子の動き
電圧を導体に印加すると、電子は電界Eを感じて加速される。これを厳密に議論しようと思うとかなり大変だ。何しろ、アボガドロ数ほどに数えきれないほどある電子が、これまた数えきれないほどある金属原子がつくる結晶のなかを動いていくのだから。
さらに電子は量子力学的な振る舞いをする。古典的に加速されるようなものではない。原子結晶によるポテンシャルをシュレディンガー方程式にいれて考えないとだめだ。これをしっかりやろうとすると、電磁気学という感じではなくなってしまうから、
固体物理のほうにまわすことにした。
電子の細かい動きはともかく、今回は電流によるジュール熱について考える。これを考えるにはそこまで難しい考察はいらない。
とりあえず必要なのは、
電子が平均的には等速で動いているという仮定だ。もちろん、実際の電子が等速で動いているわけがない。あくまでも、平均的には、という仮定だ。でもある導体に一定の電圧を加えれば、ある一定の電流が流れるという現象は、経験から正しいと言える。もし、電子が平均的に等速で動いていないとすれば、こんなふうな現象は起きないだろう。
2.ジュール熱
ということで、上のような仮定をおいて、ジュール熱をみていく。電位差Vの間を電流Iが流れている状況を考えよう。
電子は等速\(v\)で動いているとすると、単位時間あたりにある断面を流れる電子の個数Nは、
\[N=vnS\tag{1}\]
と表せる。ただし\(n\)は電子の密度、\(S\)は導体の断面積だ。\(q\)を電子の電荷とすると、電流は
\[I=qvnS\tag{2}\]
になる。
ところで、電子が電位差のある領域を運動したのにもかかわらず、等速で運動しているということは、その電位差に相当するエネルギーをどこかに渡したということだ。これが
ジュール熱
の起源である。このエネルギーが導体原子に熱として与えられているわけだ。
で、このジュール熱というのを求めてみよう。一つの電子が電位差Vを運動して得るべきエネルギーは\(qV\)である。したがって、いま考えている系では、単位時間あたり
\[P=qVN=VqvnS\tag{3}\]
のエネルギーがジュール熱となっている。(2)を使って書きなおせば、
\[P=VI\tag{4}\]
である。この式は中学校でも習う電力の式だが、実はこんな感じに導出できるのだ。
3.ジュール熱密度
さらに話を進めよう。(4)式のジュール熱を密度にする。そっちのほうが電流の流れている各場所での熱量が分かって便利だからだ。
なにも難しいことはない。導体の長さdと断面積Sをつかって、(4)の密度は、
\[P_V=\frac{VI}{dS}\tag{5}\]
とかける。電場\(E=V/d\), 電流密度\(J=I/S\)をつかって書きなおせば、
\[P_V=EJ\tag{6}\]
となるだろう。だいたいの教科書ではこの辺のことはわかっているものとして説明されてしまっているように感じたから、導出を書いてみた。そもそも電力がVIで表わされることを、中学校で知識として身につけてしまうのがいけないのかもしれない。でもだからといってこの説明を中学生にするのは無理があるし、しょうがないのか。