1.Riemann幾何での微分
微分方程式がRiemann幾何の枠組みの中で、どのようになるべきか考えてみよう。Riemann幾何で大事になってくるのは、座標変換に対する性質である。
ある微分方程式が、(何かの式)=0 の形になっているのならば、他の座標系においても同じように表されているべきなのだ。つまり、
\[f(x,y,...)=0\]
という式がある座標系で成り立つとき、
\[f'(x',y',...)=0\]
という式が他の座標系でも成り立っていて欲しい。これは左辺の式がテンソルとなっていれば実現されることがわかるだろう。
2.スカラー場の微分・ベクトル場の微分
スカラー場\(f(x)\)やベクトル場\(v^i(x)\)を\(x^i\)で偏微分したものについて考えよう。
スカラー場の偏微分について、x系からx'系に座標変換すると、
\[\frac{\partial f'}{\partial x'^i} = \frac{\partial x^j}{\partial x'^i}\frac{\partial f}{\partial x^j}\]
となるから、この量は共変ベクトルであると言える。
ベクトル場の偏微分については、
\begin{align}
\frac{\partial v'^i}{\partial x'^j} &= \frac{\partial}{\partial x'^j}\left(\frac{\partial x'^i}{\partial x^k}v^k\right) \\\\
&= \frac{\partial x^l}{\partial x'^j}\frac{\partial}{\partial x^l}\left(\frac{\partial x'^i}{\partial x^k}v^k\right) \\\\
&= \frac{\partial x^l}{\partial x'^j}\frac{\partial^2 x'^i}{\partial x^l\partial x^k}v^k + \frac{\partial x^l}{\partial x'^j}\frac{\partial x'^i}{\partial x^k}\frac{\partial v^k}{\partial x^l}
\end{align}
となってしまい、これはテンソルとはならないから、どうにかしてテンソルになるような微分を考えたい。
3.共変微分
実は、ベクトル場の偏微分がテンソルとならないのは、その量がRiemann空間から「
飛び出している」からである。
それはいったいどういうことなのか、曲面上のベクトルを例にして考えていく。
曲面\(\b{p}(x^1,x^2)\)上のベクトル場\(\b{v}(x^1,x^2)=v^i\frac{\partial\b{p}}{\partial x^i} = v^i \b{p}_i\)が、各変数に微小変化\(dx^i\)を加えた時にどのような変化をするかがわかれば、それは微分になるはずだ。早速やってみよう。
その変化を\(\delta \b{v}\)とすると、
\[\delta \b{v} = \left(\frac{\partial v^i}{\partial x^j}\b{p}_i + v^i\frac{\partial\b{p}_i}{\partial x^j}\right)dx^j \]
となるが、ここで
Gauss-Codazziの式、
\[
\frac{\partial \b{p}_i}{\partial x^j} = \Gamma^k_{~ij}\b{p}_k + h_{ij}\b{N}
\]
を用いると、
\begin{align}
\delta \b{v} &= \left(\frac{\partial v^i}{\partial x^j}\b{p}_i + v^i\left(\Gamma^k_{~ij}\b{p}_k + h_{ij}\b{N}\right)\right)dx^j\\\\
&= \left(\frac{\partial v^k}{\partial x^j} + v^i\Gamma^k_{~ij}\right)\b{p}_k dx^j + v^i h_{ij}\b{N} dx^j
\end{align}
とできる。見ればわかるように、このベクトルの微小変化は\(\b{N}\)の成分、すなわち曲面の法線ベクトルの成分を持っている。この成分が
飛び出しているのだ。Riemann幾何というのは、曲面上だけを考えて、その外については考えないような幾何学であるから、上のベクトルの微小変化を曲面上に射影したものが正味の変化\(\delta\b{v}_o\)であるといえるだろう。
つまり、Riemann空間上のベクトルの微小変化は、
\[\delta\b{v}_o = \left(\frac{\partial v^k}{\partial x^j} + v^i\Gamma^k_{~ij}\right)\b{p}_k dx^j \]
であるといえるわけだ。この式の()に囲まれた部分を
\[v^k_{~;j} = \frac{\partial v^k}{\partial x^j} + v^i\Gamma^k_{~ij}\]
と書き、これを反変ベクトル\(v^i\)の
共変微分
という。共変ベクトルを共変微分したいときは計量テンソルをかけて添字の上げ下げを行えばよい。
4.共変微分のテンソル性の確認
いちおう最後に共変微分が本当にテンソルになっているか確認しておく。...と思ったが長くなるので次回に回す。