今回の趣旨
曲率と捩率を決めてしまうと、曲線が (合同変換を除いて) 1つに定まる。じゃあ具体的な曲率・捩率を決めてやって、その曲率と捩率をもつ曲線の表示を導いてやろうというのが今回の目的である。
1.曲率一定・捩率0
曲率一定で捩率が0の曲線とはどんな曲線だろうか?まあ多分円だろう。じゃあFrenet-Serretの関係式を微分方程式だと思って解いて、本当に円のパラメタ表示が得られるのか試してみる。
\[
\frac{d}{ds}\left(\begin{array}{c} \b{t} \\ \b{n} \\ \b{b} \end{array}\right) =
\left( \begin{array}{ccc}
0 & \kappa & 0 \\
-\kappa & 0 & \tau \\
0 & -\tau & 0
\end{array} \right)
\left(\begin{array}{c} \b{t} \\ \b{n} \\ \b{b} \end{array}\right)
\]
この式に対して、\(\kappa(s) = k \neq 0 (定数),~\tau=0\)を代入すると、
\[
\left\{ \begin{array}
\b{t}'&= k\b{n} \\
\b{n}'&=-k\b{t} \\
\b{b}'&= 0
\end{array}\right.
\]
が得られる。まず最後の式から\(\b{b} = \b{B}(定ベクトル)\)となる。これは捩率が0であると、曲線はひとつの平面上に乗ることを示している。当たり前といえばあたりまえだが。そこで、曲線はz=0の平面上に(xy平面に)存在していることにしよう。
次に、上の2つの式から、
\[\b{t}''=-k^2\b{t}\]
が得られる。一方の式を微分してもう一方の式を代入するだけだ。
なんだかもうすでに円になるくさい式が現れた。なんとなく満足してしまったけど一応解いておく。
z=0の平面上に存在しているのだから、
\[
\b{t} = \left(\begin{array}{c}~A_x\sin(ks + \phi_x) \\ A_y\sin(ks+\phi_y) \\ 0 \end{array}\right)
\]
となる。\(\b{t}\)というのは接線ベクトルだったから、位置ベクトルにするにはもう一度積分してやればよい。したがって、
\[
\b{x}(s)= \left(\begin{array}{c}~a_x\cos(ks + \phi_x) \\ a_y\cos(ks+\phi_y) \\ 0 \end{array}\right)
\]
の形になる。(積分定数は無視した。平行移動するだけだから特に問題は無い。中心が原点になるだけだ。)
ところで、曲率というのは\(\kappa = |\b{x}''|\)なのだった。だから今回の場合には、位置ベクトルの二階微分の大きさが定数でなければならない。つまり、
\begin{align}
(k^2a_x\cos(ks+\phi_x))^2 + (k^2a_y\cos(ks+\phi_y))^2 &= const. \\
a_x^2\cos^2(ks+\phi_x) + a_y^2\cos^2(ks+\phi_y) &= const. \\
a_x^2\sin 2(ks+\phi_x) + a_y^2 \sin 2(ks+\phi_y) &= 0 \\
\end{align}
である。二行目から三行目は微分した。さて、三行目の式が成り立つためにはどんな条件が必要だろうか。と考えた時、sin波が打ち消し合って常に0になるというのは、振幅が同じで、位相が逆の時しかありえない。つまり、
\[a_x^2 = a_y^2 \equiv r^2,~\phi_y-\phi_x=\frac{\pi}{2}\]
となる必要がある。
もうここまでくればいいだろう。どんなに考えてもこの曲線は円である。
2.曲率0・捩率一定
曲率0の曲線は直線しか存在しないだろう。したがって、この場合には微分方程式をとくまでもなく、求める曲線は直線であることがわかる。また、直線の捩率は0であるから、曲率0⇒捩率0が言えることもわかる。
3.曲率・捩率一定
次は曲率・捩率一定の曲線について考えてみようと思う。同じ割合で曲がりながら、ある点での接触平面からも同じ割合で離れていくのだから、多分螺旋形になるんじゃないかな、と予想しておく。まずは仮定として\(\kappa(s)=K,~\tau(s)=T~~(K,Tは定数)\)としておこう。
まず考えるのはFrenet-Serretの関係式である。今回の場合には、
\[
\frac{d}{ds}\left(\begin{array}{c} \b{t} \\ \b{n} \\ \b{b} \end{array}\right) =
\left( \begin{array}{ccc}
0 & K & 0 \\
-K & 0 & T \\
0 & -T & 0
\end{array} \right)
\left(\begin{array}{c} \b{t} \\ \b{n} \\ \b{b} \end{array}\right)
\]
となる。なんとか\(\b{t}\)に関する微分方程式を導きたい。
そこで1番目の式を微分して、
\[\b{t}''=K\b{n}'\]
としておいて、2番目の式を代入する。
\[\b{t}'' = -K^2\b{t} + KT\b{b}\]
まだ\(\b{b}\)が残っているな。どうしようか。もう一回微分して、代入する作業をしてみる。
\begin{align}
\b{t}'''&= -K^2\b{t}' + KT\b{b}' \\
\b{t}'''&= -K^2\b{t}' - KT^2 \b{n} \\
K\b{n}''&= -K^3\b{n} -KT^2 \b{n} \\
\b{n}''&= -(K^2+T^2)\b{n} \\
\end{align}
途中で\(\b{t}\)の微分方程式を求める方針はやめて、簡単にまとまりそうだった\(\b{n}\)に対しての微分方程式を求めることにしてしまった。
何はともあれ、これで一つのベクトルに関する微分方程式を出すことができた。あとは順々に積分していくだけだ。
まず\(\b{n}\)は\(\alpha=\sqrt {K^2+T^2}\)とおけば、
\[
\b{n}
= \left(\begin{array}{c}
A_x\sin(\alpha s + \phi_x) \\
A_y\sin(\alpha s + \phi_y) \\
A_z\sin(\alpha s + \phi_z)
\end{array}\right)
\]
というふうになる。\(\b{n}=\b{x}''/K\)なのだから、上の式を二回積分すれば曲線の式になり、
\[
\b{x}(s)=\left(\begin{array}{c}
a_x\sin(\alpha s + \phi_x) +C_{1x}s+C_{2x}\\
a_y\sin(\alpha s + \phi_y) +C_{1y}s+C_{2y}\\
a_z\sin(\alpha s + \phi_z) +C_{1z}s+C_{2z}
\end{array}\right)
\]
の形に表されることがわかる。円を描きながら、\((C_{1x},C_{1y},C_{1z})\)方向に進んでいくようなイメージか。あとは係数を条件に合わせてやるわけだが、今回も曲率が共に一定なので、この式を、
\[|\b{x}''|=const.\]
に入れてみる。すると、前回と同じような式展開によって
\[a_x^2\sin 2(\alpha s+\phi_x) + a_y^2 \sin 2(\alpha s+\phi_y) + a_z^2\sin 2(\alpha s+\phi_z) = 0 \tag{*}\]
が得られる。これが任意のsについて成り立っているためには、どんな条件が必要だろうか?
yとzの項を一つにまとめてみる。
\[a_y^2 \sin 2(\alpha s+\phi_y) + a_z^2\sin 2(\alpha s+\phi_z) = \sqrt{a_y^2+a_z^2+a_ya_zcos(\phi_y-\phi_z)}\sin2\left(\alpha s + \tan^{-1}\left(\frac{a_y\sin\phi_y+a_z\sin\phi_z}{a_y\cos\phi_y+a_z\cos\phi_z}\right)\right)\]
というふうになるから、振幅部分と位相部分をまとめてしまって、
\[a_y^2 \sin 2(\alpha s+\phi_y) + a_z^2\sin 2(\alpha s+\phi_z) \equiv A^2\sin2(\alpha s + \phi)\]
とすれば、*式は
\[a_x^2\sin 2(\alpha s+\phi_x)+ A^2\sin2(\alpha s + \phi) = 0\]
と書き換えられ、さっきと同じである。もうめんどくさくなってきたので、この辺にしておく。あとは適当に初期条件とかを決めて積分定数を定めるだけだ。