1.接平面
今回は、曲面のある点で接平面がどのように表されるか考える。解析学で関数の性質を調べるのに微分をして接線を求め、近似的な値を求めたりできたように、接平面を考えることは曲面を調べる上で非常に役に立つ。
接平面を求めるには、曲面のある点において2つの接ベクトルを求めればいいから、これを目標にやってみよう。
曲面上の曲線を考え、その曲線の接ベクトルを曲面の接ベクトルとして採用するという方針で行こう。
まず曲面は前回と同じように\(\b{p}=\b{p}(u^1,u^2)\)によって与えられているとする。
2つの接ベクトルを求めるために、ある点\(u^1,u^2\)を通る曲線を2つ考える。言ってしまえばどんな曲線でもかまわないのだが、なるべく計算が簡単になるやつがいいだろう。そこで、片方のパラメータを固定しながら、もう片方のパラメータを動かしてできる曲線
\begin{align}
\b{x}_1(t)&=\b{p}(u^1(t),u^2)\\
\b{x}_2(t)&=\b{p}(u^1,u^2(t))
\end{align}
にしよう。この2つの曲線の接ベクトル\(\b{t}_1,\b{t}_2\)は、
\[\b{t}_i = \frac{d\b{x}_i}{dt} = \frac{\partial\b{p}}{\partial u^i}\frac{du^i}{dt}\]
である。これを接ベクトルとしてもいいのだけど、\(\frac{du^i}{dt}\)という因子は曲線によって変わる量なので取り除いてしまおう。これは別にベクトルの向きが変えるわけではないから問題無い。
以上を踏まえて、これからは曲面の二本の接ベクトル、すなわち接平面を定めるベクトルとして
\[\b{v}_i=\frac{\partial\b{p}}{\partial u^i}\tag{1}\]
を使うことにする。これらは自然基底と呼ばれる。
2.法線ベクトル
ついでなので、接平面の法線ベクトルも見つけておこう。外積を用いれば法線ベクトル\(\b{N}\)は、
\[\b{N}=\frac{\partial\b{p}}{\partial u^1}\times\frac{\partial\b{p}}{\partial u^2}\tag{2}\]
とかける。
単位ベクトルにしたほうが色々と便利なので、大きさを求めてやろう。一般にベクトル\(\b{a},\b{b}\)から外積でできたベクトルの大きさは、その成す角を\(\theta\)として、
\[|\b{a}\times\b{b}|=|\b{a}||\b{b}|\sin\theta\]
で与えられる。二乗して少し変形すると、
\begin{align}
|\b{a}\times\b{b}|^2&=|\b{a}|^2|\b{b}|^2\sin^2\theta\\
&=|\b{a}|^2|\b{b}|^2(1-\cos^2\theta)\\
&=|\b{a}|^2|\b{b}|^2-(\b{a}\cdot\b{b})^2
\end{align}
となる。これを使うと、(2)の法線ベクトルの大きさは
\[|\b{N}|^2 = \left|\frac{\partial\b{p}}{\partial u^1}\right|^2\left|\frac{\partial\b{p}}{\partial u^2}\right|^2-\left(\frac{\partial\b{p}}{\partial u^1}\cdot\frac{\partial\b{p}}{\partial u^2}\right)\tag{3}\]
を得る。ここで
前回紹介した曲面の第一基本形式に現れる行列\(G\)
\[
G=\left(\begin{array}{cc} g_{11}&g_{12} \\ g_{21}&g_{22}\end{array}\right)~~~~ただし~g_{ij}=\frac{\partial\b{p}}{\partial u^i}\cdot\frac{\partial\b{p}}{\partial u^j}
\]
を思い出すと、(3)はGの行列式そのものであることがわかるだろう。そこでGの行列式を\(g=\det G\)と書くと、
\[|\b{N}|^2 = g\tag{4}\]
であり、よって単位法線ベクトル\(\b{n}\)は、
\[
\b{n}=\frac{\b{N}}{\sqrt{g}} = \frac{1}{\sqrt{g}}\frac{\partial\b{p}}{\partial u^1}\times\frac{\partial\b{p}}{\partial u^2}
\]
で与えられる。