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電磁波における電界と磁界の関係


1.電界と磁界の直交性

平面波光の電界と磁界は直交する。これを示してみよう。基本となる関係式は、Maxwell方程式の中の一本
\[ \rot \b{E} = -\frac{\partial \b{B}}{\partial t} \] である。この式に、平面波解 \begin{align} \b{E} &=\b{E}_0e^{i(\omega t - \b{k}\cdot\b{r})} \\\\ \b{B} &=\b{B}_0e^{i(\omega t - \b{k}\cdot\b{r})} \end{align} を代入してやって、結果として \[ \b{k}\times\b{E} = \omega\b{B}\tag{1}\] という関係式を得る。この式を見れば一目瞭然だろう。磁界が電界と波数ベクトルの外積によってできているということは、平面波では電界と磁界は直交する、ということだ。

平面波では、というのが意外と重要なのかもしれない。当然Maxwell方程式の解は平面波以外にも無数にあるわけだから、このような議論では全ての電磁波において磁界と電界が直交するとは言うことができない。うーん、一般の電磁波の場合にはどうなるんだろう。どうも一階微分の入っていない(導電率が0の)状態の方程式なら、その一般解の形からEとBが直交することが示せるらしい。ちょっと調べれば出てくるから調べてみてほしい。しかし導電率が0でない場合にはどうなるんだ、ということについて僕は何も分からない。誰か知ってる人がいたら教えてほしいものだ。


2.電界・磁界と波数ベクトルの直交性

上で電界と磁界の直交性をみてやったので、次は電界と波数ベクトルが直交することも証明しておこう。真電荷はないとしているので、 \[\Div \b{E} = 0\] である。これに平面波解を代入してやればすぐに、 \[\b{k}\cdot\b{E} = 0\] が得られる。これで十分だ。当然波数ベクトルと磁界は(1)式から直交していることが分かるので、これで電界、磁界、波数ベクトルが互いに直交していることが分かった。

3.電界強度と磁界強度の関係

そういえば電界強度と磁界強度の間の関係を説明し忘れていたので、この辺でその話をしておく。そんなに難しい話ではない。
(1)式において、平面波解の場合には電界磁界ともに同一の波の因子を持っているので、 \[ \b{k}\times\b{E}_0 = \omega\b{B}_0 \tag{2}\] という関係が電界強度と磁界強度の間になりたっていないといけない。話を簡単にするために、\(\b{k}\)はx方向、\(\b{E}\)はy方向、\(\b{B}\)はz方向、を向いていることにしよう。簡単にするために、とは言ったが、これによって特に議論の一般性が失われるわけではない。なぜならば、座標というのは観測者によって勝手に決められる量だからである。もし他の座標系を使いたければ、行列なんかを用いて変換してあげればいいのだ。
ともかく、そういうことにすると式(2)は、 \[k_xE_{0y} = \omega B_{0z}\] となり、さらに\(k=\frac{\omega}{c}\bar{n}\)の関係を用いれば、 \[B_{0z} = \frac{\bar{n}}{c}E_{0y}\tag{3}\] である。

したがって電界強度と磁界強度は独立でないということがいえて、その二つは物質の屈折率によって関係付けられていることがわかる。ちなみに、\(B\)を\(H\)とした時の関係式 \[H_{0z} = \frac{\bar{n}}{\mu_0 c}E_{0y}=\sqrt{\frac{\epsilon}{\mu_0}}E_{0y}\equiv \frac{E_{0y}}{Z}\tag{4}\] のように定義される\(Z\)を特性インピーダンスと呼ぶこともある。インピーダンスという呼び方は、磁界が電流に対応し、電界が電圧に対応していることからきている。単位もΩである。

これからもこの関係式はよく使うので覚えるくらいのつもりでもよいかもしれない。

4.電界と磁界の位相差

位相差は式(3)から読み取ることができる。まず思い出してほしいことは、\(\b{B}_0\)や\(\b{E}_0\)というのは複素振幅という量であり、その波の位相の情報も含んでいる、ということである。

一応しっかりと式で説明しておこう。まず\(E_{0y},B_{0z},\bar{n}\)を全て極表示で表し、 \[E_{0y} = |E_{0y}|e^{i\phi_E},~B_{0z} = |B_{0z}|e^{i\phi_B}, ~\bar{n}=|\bar{n}|e^{i\theta} \] とすると分かりやすい。(3)に代入してやれば、 \begin{align} \left\{\begin{array} ~|B_{0z}| &= \frac{|\bar{n}|}{c}|E_{0y}| \\\\ \phi_B &= \theta + \phi_E \end{array}\right. \end{align} という大きさに関する関係式と、位相に関する関係式の二本が得られる。これによって位相差が分かるわけだ。ちなみに\(\theta\)というのは複素屈折率\(\bar{n}=n+i\kappa\)の偏角なのだから、 \[\theta = \tan^{-1}\left(\frac{\kappa}{n}\right)\] となることに注意しておこう。つまり消衰係数\(\kappa=0\)の時には電界と磁界に位相差はないということだ。