物理とか

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Riemann空間とは


1.Riemann空間の定義

Riemann空間

の定義をとりあえず書いておこう。

ある可微分多様体\(M\)上にその局所座標系\(\phi_\lambda:E_\lambda\to M\)(ただし\(E_\lambda\subset \b{R}^n\))が与えられていて、\(x \in E_\lambda\)に対して二次の対称テンソル場\(g_{ij}(x)\)が定義されているとする。\(M\)上の微小距離\(ds\)を \[ds^2 = g_{ij}dx^idx^j \] と定義するとき、\(M\)はRiemann空間である。

なかなかの意味不明度。ひとつずつおっていこう。

2.多様体とは

とりあえず多様体から始める。

多様体

の定義は

集合\(A\)に対してその部分集合の族\(\mathcal{K}\)が定義されていて、その\(\mathcal{K}\)によって\(A\)に位相が入っているとする。この位相空間\((A,\mathcal{K})\)に対して、ある写像の集合\(\mathcal{F}=\{f_\lambda:K_\lambda\to\b{R}^n\}\)(ただし\(K_\lambda\in\mathcal{K}\))があって、 \[\bigcup_{\forall\lambda}K_\lambda = A\] かつ全ての\(\lambda\)について\(f_\lambda\)が同相写像であるとき、この位相空間\((A,\mathcal{K})\)を多様体という。

またも意味不明だ。どうしよう。これだから抽象数学は嫌いだ。

3.位相空間とは

位相空間

を定義する。とはいっても位相空間については、いろんなページがあるしもっとわかりやすく説明してあるところもあるだろうから適当に流す。

とりあえず大事なことは、ある集合に位相を入れる=その集合の中の開集合を定義する、ということである。もともと位相空間というのは、普通のEuclid空間における距離の概念のエッセンスのみを抽出した概念だ。距離というのは、空間における二点間の「近さ」を表す概念で、位相はそれをさらに一般化したものと捉えられる。一応しっかりとした定義を書いておこう。

集合\(A\)に対してその部分集合の族(つまり集合の集合)\(\mathcal{K}\)を定義して、\(\mathcal{K}\)が次の3つの性質を満たすときその組\((A,\mathcal{K})\)を位相空間といい、\(A\)に\(\mathcal{K}\)が位相を入れるという。また\(\mathcal{K}\)の元ひとつひとつを開集合と呼ぶ。
(1) \(\phi\in\mathcal{K},~A\in\mathcal{K}\)
(2) \(\mathcal{K}\)に含まれる有限個の元の積集合はまた\(\mathcal{K}\)に含まれる。
(3) \(\mathcal{K}\)に含まれる有限個または無限個の元の和集合はまた\(\mathcal{K}\)に含まれる。

とまあこんな感じだ。距離が定義されたEuclid空間は位相空間である。その証明は他の色々なページに書かれているだろうから調べて見てほしい。
ともかく、このように定義すると「近さ」という概念のエッセンスだけをとりだしたものになるらしい。おそろしく抽象的だが、きっと頭のいい数学者たちががんばって考えたのだろう。とりあえずは、位相というものを入れることによって、その空間における近さの概念を定義したことになる、ということだけ覚えておけばよい。

ついでにある点の

近傍

という概念も定義しておこう。近傍とは読んで字のごとく、ある点の近く、という意味である。

\(A\)の部分集合\(V\)が\(a\in A\)の近傍である、とは、
\(a\in K_p\subset V\)となる\(\mathcal{K}\)のある元\(K_p\)がひとつでも存在することである。

これはなんとなくイメージできるのではないだろうか?つまり、ある点の近傍とは、位相で定義された開集合を含む集合(または領域とでもいおうか)のことなのである。

4.Hausdorff空間

位相空間の話をしたらこれを無視するわけにはいかない。

Hausdorff空間

とは、
位相の入った空間\(A\)の互いに異なる元\(a_1,a_2\)の近傍をそれぞれ\(V_1,V_2\)とするとき、
どんな\(a_1,a_2\)に対しても\(V_1\cap V_2=\phi\)とできる空間
のことをいう。

これはつまり、言い方は正しくないかもしれないが、空間内の2つの点を分離できる性質のことである。2つの点を分けて考えることができるといっても良いかもしれない。そんなことができない空間があるのか、という疑問も湧いたが、どうもうまいこと位相を定義してやればそんな空間も存在するらしい。本筋にはあんまり関係はしないが、Riemann空間もこのHausdorff空間の一種なんだということを知っておくのもよいかと思って書いてみた。

5.同相写像・座標

多様体の定義のところで出てきた

同相写像

という言葉があった。同相写像とは、その写像\(f\)が全単射でありかつ\(f\)と\(f^{-1}\)がどちらも連続写像であることをいう。

多様体の定義を見直すと、Euclid空間からの同相写像が存在することが条件になっている。これはつまり、多様体の部分部分には、それに対応したある範囲のEuclid空間と、一対一の対応がついているということである。この対応関係があることで、多様体のひとつひとつの点に

座標

を定義することができる。

ある多様体\(A\)の1つの元\(a\)の座標とは、写像\(f_\lambda:V_\lambda\to E_\lambda\)(ただし\(V_\lambda\in A,E_\lambda\in\b{R}^n\))によって\(a\)がEuclid空間に移されるその点\(x=f_\lambda (a)\)のことをいう。そんなに難しい概念では無いと思う。この座標は多様体全体にわたって同じように定義されているわけではなく、場所によって\(f_\lambda\)の関数系は変わる。だから普通はこの場所でしか使えませんよ~という意味を込めて、このような座標のことを

局所座標

と呼ぶ。
さらに、このような写像(または関数)の集合\(\{f_\lambda\}\)のことは

局所座標系

と呼ばれる。

6.Riemann空間とは

これで最初にあげたRiemann空間の定義がある程度理解出来たのではないだろうか?もちろん可微分多様体やら色々勉強するべきことはあるのかもしれないが、なんとなくの概要だけはつかめた。(気がする。)可微分というのはまあだいたい滑らかな空間なんだなー、くらいに思っておけばいいんじゃないだろうか。次回ベクトルやテンソルについて勉強して完成かな?