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偶関数・奇関数のフーリエ変換


1.偶関数のフーリエ変換

今回は偶関数や奇関数といった少し特別な関数のフーリエ変換について考えていこう。このページではフーリエ変換・逆変換を下の式で定義する。 \[\left\{\begin{align} F(k)&=\int_{-\infty}^\infty f(x)e^{-ikx} dx \\ f(x)&=\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^\infty F(k)e^{ikx} dk \end{align}\right.\tag{1} \] 偶関数\(f(x)=f(-x)\)についてフーリエ変換を計算してみる。 \begin{align} F(k)&=\int_{-\infty}^\infty f(x)e^{-ikx} dx \\ &=\int_{-\infty}^0 f(x)e^{-ikx} dx + \int_{0}^\infty f(x)e^{-ikx} dx \\ &=\int_\infty^0 f(-y)e^{iky}(-dy)+\int_{0}^\infty f(x)e^{-ikx} dx~~~(y=-x)\\ &=\int_0^\infty f(y)e^{iky}dy+\int_{0}^\infty f(x)e^{-ikx} dx~~~(f(y)=f(-y))\\ &=\int_0^\infty f(x)e^{ikx}dx+\int_{0}^\infty f(x)e^{-ikx} dx \\ &=\int_0^\infty f(x)\left(e^{ikx}+e^{-ikx})\right)dx \\ &=\int_0^\infty f(x)\left(2\cos(kx)\right)dx \\ &=2\int_0^\infty f(x)\cos(kx)dx \tag{2} \end{align} というふうにcosだけでかけてしまうし、しかも\(F(k)\)の虚数部は消えてしまって、実数部だけ残る。さらに \[F(-k)=2\int_0^\infty f(x)\cos(-kx)dx=2\int_0^\infty f(x)\cos(kx)dx=F(k)\tag{3}\] となってフーリエ変換後の関数\(F(k)\)も偶関数になっていることがわかる。なんとなく面白い現象だ。

2.奇関数のフーリエ変換

次に\(f(x)=-f(-x)\)という奇関数のフーリエ変換を考えてみる。ほとんど同じ計算になるが、しっかり書いてみる。 \begin{align} F(k)&=\int_{-\infty}^\infty f(x)e^{-ikx} dx \\ &=\int_{-\infty}^0 f(x)e^{-ikx} dx + \int_{0}^\infty f(x)e^{-ikx} dx \\ &=\int_\infty^0 f(-y)e^{iky}(-dy)+\int_{0}^\infty f(x)e^{-ikx} dx~~~(y=-x)\\ &=\int_0^\infty (-f(y))e^{iky}dy+\int_{0}^\infty f(x)e^{-ikx} dx~~~(f(y)=-f(-y))\\ &=-\int_0^\infty f(x)e^{ikx}dx+\int_{0}^\infty f(x)e^{-ikx} dx \\ &=-\int_0^\infty f(x)\left(e^{ikx}-e^{-ikx})\right)dx \\ &=-\int_0^\infty f(x)\left(2i\sin(kx)\right)dx \\ &=-2i\int_0^\infty f(x)\sin(kx)dx \tag{4} \end{align} というふうに次はsinだけでかけてしまう。しかもこちらは虚数部だけ残り、さらには \[F(-k)=-2i\int_0^\infty f(x)\sin(-kx)dx=2i\int_0^\infty f(x)\sin(kx)dx=-F(k)\tag{5}\] となって\(F(k)\)は奇関数になっている。どうもフーリエ変換前後で、その関数が偶関数か奇関数かという情報は全く失われないようだ。

3.逆変換

(2),(4)の逆変換について考えてみよう。フーリエ逆変換は \[f(x)=\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^\infty F(k)e^{ikx} dk\] で計算できる。しかし、(3)や(5)から、F(k)の偶関数性や、奇関数性はわかっているから、(2)と(4)と全く同じように計算すればいい。

実際に計算してみると、(2)の逆変換は、 \[f(x)=\frac{1}{\pi}\int_{0}^\infty F(k)\cos(kx)dk\tag{6}\] さらに(4)の逆変換は \[f(x)=\frac{i}{\pi}\int_{0}^\infty F(k)\sin(kx)dk\tag{7}\] で与えられることがわかる。さらに、適当に係数を操作すると、次のような変換対が得られる。 \[\left\{\begin{align} F(k)&=\int_{0}^\infty f(x)\cos(kx) dx \\ f(x)&=\frac{2}{\pi}\int_{0}^\infty F(k)\cos(kx) dk \end{align}\right.\tag{8}\] \[\left\{\begin{align} F(k)&=\int_{0}^\infty f(x)\sin(kx) dx \\ f(x)&=\frac{2}{\pi}\int_{0}^\infty F(k)\sin(kx) dk \end{align}\right. \tag{9} \] それぞれ、

フーリエコサイン変換

フーリエサイン変換

と呼ばれることもある。これらの変換はxがマイナスのところは使わないから、プラスだけで定義された関数には効果的だろう。

4.フーリエ変換の性質

(2)と(4)によって、偶関数はフーリエ変換によって実数部に、奇関数はフーリエ変換によって虚数部に押し込められることが分かった。

任意の関数\(g(x)\)は偶関数と奇関数の和によって表せることは簡単に示せる。つまり、 \[g(x)=\frac{g(x)+g(-x)}{2}+\frac{g(x)-g(-x)}{2}\tag{10}\] のように分解してやるのだ。こうすれば、第一項は偶関数だし、第二項は奇関数になる。ということは、適当な関数をフーリエ変換した時、その偶関数的な部分は実数部に、逆に奇関数的な成分は虚数部に入っているといえるだろう。こういうことに気づくと、フーリエ変換への理解がすすむ気がする。