1.波動方程式
波動方程式とは、関数f(x,t)に関しての
\[\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}-\frac{1}{V^2}\frac{\partial^2 f}{\partial t^2} = 0 \tag{1}\]
の形の微分方程式をいう。音波や電波などはこの式にしたがって決まっているのだ。今回は、この微分方程式の一般解を求めてみる。
2.変数変換
天下り的ではあるが、変数変換
\[
\left\{\begin{align}
u=x+Vt\\
v=x-Vt
\end{align}\right.\tag{2}
\]
を行う。この変換を逆に見れば、
\[
\left\{\begin{align}
x=\frac{u+v}{2}\\
t=\frac{u-v}{2V}
\end{align}\right.
\]
となっていることがすぐに分かる。つまり、
\[f(x,t)=f\left(\frac{u+v}{2},\frac{u-v}{2V}\right)\]
ということだ。ではこれの偏微分を計算してみよう。使うのは、
\[\frac{\partial f}{\partial x}=\frac{\partial f}{\partial u}\frac{\partial u}{\partial x}+\frac{\partial f}{\partial v}\frac{\partial v}{\partial x}\]
という偏微分の公式だ。次のようになる。
\begin{align}
\frac{\partial f}{\partial x}&=\frac{\partial f}{\partial u}\frac{\partial u}{\partial x}+\frac{\partial f}{\partial v}\frac{\partial v}{\partial x}\\
&= \frac{\partial f}{\partial u}+\frac{\partial f}{\partial v}\\
\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}
&= \frac{\partial }{\partial x}\left(\frac{\partial f}{\partial u}+\frac{\partial f}{\partial v}\right)\\
&=\frac{\partial }{\partial x}\left(\frac{\partial f}{\partial u}\right)+\frac{\partial }{\partial x}\left(\frac{\partial f}{\partial v}\right)\\
&=\frac{\partial^2 f}{\partial u^2}\frac{\partial u}{\partial x}+\frac{\partial^2 f}{\partial v\partial u}\frac{\partial v}{\partial x}+\frac{\partial^2 f}{\partial v^2}\frac{\partial v}{\partial x}+\frac{\partial^2 f}{\partial v\partial u}\frac{\partial u}{\partial x}\\
&=\frac{\partial^2 f}{\partial u^2}+2\frac{\partial^2 f}{\partial v\partial u}+\frac{\partial^2 f}{\partial v^2}
\end{align}
という風に、xの二階偏微分を計算できる。
同じようにして、tの二階偏微分も計算すれば、
\[\frac{\partial^2 f}{\partial t^2}= V^2 \left(\frac{\partial^2 f}{\partial u^2}-2\frac{\partial^2 f}{\partial v\partial u}+\frac{\partial^2 f}{\partial v^2}\right)\]
となる。
これを最初の波動方程式(1)に代入すると、うまいこと消えて、
\[\frac{\partial^2 f}{\partial v\partial u}=0 \tag{3}\]
を得る。簡単な変数変換によって、全然見た目の違う方程式が出てくるのは面白い。ぱっと見ただけでは、(1)と(3)が全く同じ方程式であるとは想像もつかないな。
3.積分する。
あとは片方の変数ごとに積分するだけだ。まずは(3)式をvについて積分すると、
\[\frac{\partial f}{\partial u}=(vについての定数) \tag{4}\]
さて、左辺はvについての微分が取れた。右辺は0だったので、積分すると定数になるが、これはvについて定数であればよい。つまり、uに関して変化しても一向に構わないのだ。そこで、右辺を任意の関数g(u)とおいて、
\[\frac{\partial f}{\partial u}=g(u) \tag{5}\]
となる。さらに、uについても積分して、同じように考えて積分の時にでてくる定数をh(v)とおけば、
\[f=\int g(u)du+h(v)\]
となる。ところで、g(u)というのは任意の関数だったから、\(\int g(u)du\)を改めて\(g(u)\)とおけば、
\[f=g(u)+h(v)\tag{6}\]
というふうな解が出る。最後に、u,vをx,tに戻せば、
\[f(x,t)=g(x+Vt)+h(x-Vt)\]
が、一般解である。ちなみにこれは
ダランベールの解
と呼ばれている。g,hは(微分できれば)完全に任意の関数であるから、波動方程式というのはかなり色々な形の解を持つことがわかるだろう。